(Part 1からの続き)
――では、次に少し前のことについてお尋ねしたいと思います。プロになる前にバックヤードレスリングをやっていたというのは本当ですか?
(ダニエルソン) まあ、本当だよ(笑)でも、今見かけるようなクレイジーなバックヤードレスリングではなくて、言葉通り「バックヤードでレスリングをしている」というもので、もっとプロレスごっこみたいなものだけど(笑)これはね、なんでやったかって言うと、僕の友達がウェブデザインのクラスを取っていて、何かウェブサイトを作りたい、と。で、プロレスをちょっと取り入れようということになって、半分冗談で作ったんだ。写真とかアップして。それを見た人達が、「ブライアン・ダニエルソンはバックヤードレスリングをしている!」って言い出したんだけど、実際は「バックヤードでプロレスごっこをしている」ってことなんだけどね。
――その時の経験が今に生かされていることはありますか?
(ダニエルソン) うーん、無いかなぁ…。当時はマットレスの上でお互いにプロレスの技を出し合っていただけで、それ以上のものではないからなぁ。
――では、その時の面白いエピソードなどありますか?
(ダニエルソン) 実はその時の映像はたくさんあるんだよ。だから、今後僕のベスト版DVDを作ることがあれば、特典映像として入れるのもアリかなと(笑)テレビ番組の『Grind 』って知ってる?‘90年代のものなんだけど、水着を着た人達が音楽に合わせて踊り狂ったりしている馬鹿げた番組で、それをパロってくだらないことをやったりしてたんだ。2人がレスリングしている回りで大勢の人が踊ったりとか(笑)だから、今それをみると「あー、くだらないなー(笑)」って思うよ。いや、良い意味でね(笑)
――つまり、その時のレスリングは今の物とは全く別物なわけですね。なるほど。では次にお伺いしたいのは、ショーン・マイケルズ主宰のスクールやロス道場でストロングスタイルを学び、またウィリアム・リーガルにヨーロピアンレスリングの基礎も学んでいるということもあって、あなたのレスリングスタイルは色んなものがミックスされた独特なスタイルだと思うのですが、あなたの考える理想のプロレススタイルとは何でしょうか?
(ダニエルソン) 難しい質問だね…。理想のプロレスっていうのは、その時の状況や対戦相手によっても変わると思うんだけど、基本的には僕は猪木のスタイルがすごく好きなんだ。例えば猪木対藤波の60分フルタイム(恐らく1988年8月8日のIWGP戦)とか、もう天才的だと思う。今、僕がやろうとしているのはああいった感じのスタイルなんだ。それと古いイギリスのプロレスもよく見ている。昔の新日スタイルに似てるんだけど、もっとマット上の攻防が中心で、猪木の試合ほど白熱はしていない。でも技術的には非常に素晴らしい。だからこの二つのスタイルが僕にとっての理想だし、お気に入りと言えるね。どちらかと言えば、マット中心のレスリングスタイルが好きなんだ。例えば初期UWFの藤原とか、初代タイガーマスクとか。初代タイガーに関して言えば、初期UWFに参戦していた頃が一番好きなんだ。蹴りは凄く冴えてるし、フジワラアームバーなんかのサブミッション技術も素晴らしい。この頃のスーパータイガーには良い要素が多く詰まっていると思うよ。
――ということは、タイガーマスクよりもスーパータイガーが好きということですよね?
(ダニエルソン) そう!スーパータイガーは本当に素晴らしい。凄いとしか言いようがない。僕が今、一ファンとしてプロレスをみるなら、この当時の試合を見るね。間違いなく。
――では、現在あなたの目指しているプロレスはその頃のもの、ということになりますか?
(ダニエルソン) いや、今のアメリカのマット界では、こういったスタイルは無理なんだよ。まずファンが望んでいない。例えばこういうスタイルで試合をしたとするでしょ?そうしたら試合開始5分で客から「Boring!(つまらない)」ってチャントが始まるよ。でも僕自身はああいったスタイルを現在のスタイルに組み入れることは可能だと思っている。だから僕の基本スタイルにこういった要素を入れようとしているところなんだよ。特にアメリカでは、色んな要素を入れる必要がある。そうでないと、誰も興味を示してくれないからね。だから個人的には、そういった要素を加えているのが理想のスタイルなんじゃないかと思っているんだ。
――なるほど。なかなか難しいですね。ところで最近のあなたのレスリングスタイルはキラー猪木を彷彿とさせていますよ。
(ダニエルソン) 本当に?どうもありがとう。
――当時の新日本を観て育っているので、やはり私の考えるプロレスの根底にあるのはああいったスタイルなんです。今の新日本とは随分違うと思いますが。
(ダニエルソン) でも、僕はナガタはとても良い選手だと思うよ。彼は素晴らしいよ。
――あの白目はどう思います?(笑)
(ダニエルソン) ああ、こういうやつ?(笑)(と言って真似をする)。あれは、彼なりに何か自分らしいことをやっているんだと思うけど(笑)でも、彼はアマレス出身で、基礎はもちろん素晴らしいし、キックも素晴らしい。彼のテクニックは全てにおいて素晴らしいと思う。僕が新日にいて彼らと試合をした時、僕はまだ今ほどの経験も技術もなかったけど、当時から永田は素晴らしいとずっと思っていたんだ。いま、僕が一個人としてプロレスを観るなら、さっき言った試合の他には間違いなく彼の試合も観るね。彼と棚橋とのIWGP戦とか本当に素晴らしいと思う。またプロレスラーとして見た場合も、僕が理想としているレスラーに近いと思うんだ。ヘビー級としても彼は素晴らしい試合ができるし、Jr.ヘビーとしても素晴らしい。彼はキラーだと思う。永田の試合は本当に好きだね。
――あなたも十分キラーですよ(笑)
(ダニエルソン) 僕なんかまだまだ。頑張ってはいるけどね(笑)
――なぜ新日ロス道場に行ったのですか?
(ダニエルソン) 当時、カリフォルニアの若いレスラーをトレーニングするために、ロス道場がレスラーを募集してたんだ。「ここに来て練習するといいよ」って感じで。知っていると思うけど、アメリカにはレスラーがゴロゴロいる。で、みんななんとかしてリングに上がろうと必死なんだ。みんな日本に行きたがっているから、自分の映像や写真を日本に送りつけて売り込みをしている。日本以外にも、イギリス、メキシコ、WWEなんかにもね。で、僕がロス道場に行った時には真壁なんかもいて、ある意味トライアウトみたいな感じでまずは練習に参加したんだ。レスリングスキルなんかを見られたんだけど、「みんなレスリングスキルはかなり良い。でもどれくらい真剣に考えているのかなども、精神面ももっと見てみたい」って言われたんだ。実際に僕は荷物をまとめてロス道場に入門した最初のレスラーだったんだよ。最初は床で寝たりしてさ。それでも僕が望んでいたことだったんだ。とにかく日本に行きたかったし、アメリカでレスラーとして生活ができるとは思っていなかったし。アメリカだととにかく体が大きければ良いという風潮があるけど、日本だとJr.ヘビーでも十分に戦っていける。だからこれこそが僕のスタイルだと思ったんだ。
――実は私は以前にロス道場のドキュメンタリーみたいなものを見たことがあるんです。ロス道場の練習を密着取材していたものなんですけど、とにかくあなたが黙々と走っている姿がとても印象に残っていて、この選手は大物になる!と宣言していたんですよ。
(ダニエルソン) 本当に?どうもありがとう。
つづく
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【文・ジュードーチョップ aka Yama-chan】