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  • 月刊 ネクロ・ブッチャー


    念願だった両国国技館でカシンとRVDを相手にひどいやられようにもかかわらず、一部のファンを魅了しまくった我がマンハッタンドロップ顧問(本人承諾済み)のネクロさん。ひさしぶりにお会いしたら、また一段とだらしないカラダになっていたので一安心。ネクロさんウォッチャーの方ならご存じの通り、一時期の激痩せした頃が嘘のよう。だらしないカラダだからこそネクロさんなわけで、グッドシェイプしたネクロさんなんてストレートヘアーの天龍源一郎よりもありえません。ここはひとつ本来のやさぐれた姿へと更に戻って欲しいものです。そんなネクロさんに近況などを聞いてみました。

    ――いやーお久しぶりです。日本での活躍ぶりはネットや雑誌で逐一チェックしていますよ。

    (ネクロ・ブッチャー 以下顧問) おおーひさしぶり。両国の試合は観てくれた?

    ――動画共有サイトで少しだけ観ました。また思いっきり流血していましたね。やはり、大相撲が好きなネクロさんにとって両国はいつも以上にエキサイトされたんじゃないですか?

    (顧問) 大相撲の殿堂って言われている両国国技館で試合ができたなんてとても誇りに思うよ。

    ――ところで、例の奥さんのトラブルは解決されたって聞きましたけど?

    (顧問) あーあれね。もうワイフとは一緒に住んでるし、ひとまずは解決したよ。

    ――それはよかった。これでまた思う存分イノキゲノムで暴れられますね。

    (顧問) ああ。

    ――唐突ですけど、いままでで最も印象に残る試合とかってあります?

    (顧問) んー。三年くらい前かなあ、ジプシー・ジョーとの試合。ジプシー・ジョーはオレにとってアイドルだから。

    ――ジ、ジプシー・ジョー!実は、はじめてネクロさんの試合を観たとき、真っ先にジプシー・ジョーを連想したんですよ。動きといい、なんとも味のある風貌といい、ジプシー・ジョー二世だなと。

    (顧問) ワーオ。それは光栄だよ。

    ――あと、練習は一切しないって本当ですか?

    (顧問) 一切しない(キッパリと即答で)。

    ――試合前のウォーミングアップとかも?

    (顧問) 一切しない。強いて言えばビールを飲むことが練習だな。

    ――がははっ。ビールトレーニングですね。では、いまネクロさんが最も注目しているデスマッチファイターは誰ですか?

    (顧問) んー。

    ――例えばいまだと、ブレイン・ダメージだとかドレイク・ヤンガー、それにダニー・ハボックとかいますよね。

    (顧問) あっ、一人いる。男じゃないんだけどすごいのがいるぞ。その名前は女子レスラーのミッキー・ナックルズ(現在はムースというリングネームでTNAに出場していたが足の怪我で戦線離脱中)。彼女こそデスマッチファイターだ。オレが保証する。

    ――デスマッチ・ジーザスのネクロさんが認めるデスマッチファイターが女子レスラーだなんて、意外です。名前は聞いたことありますが、まだ実際には観たことないです。男顔負けの血みどろファイトをするっていう。

    (顧問) そうそう。彼女はマジですごいよ。

    ――では最後に、いままで一番痛かった、もうやりたくないデスマッチアイテムは何ですか?

    (顧問) あーそれはね、誰がなんと言おうとサボテンだね。あれは最悪。サボテンマッチの後は何週間も体中にトゲが刺さったまま抜けないんだ。もう体中がチクチクチクチクしてたまんないぞ。

    ――げげっ。サボテン恐るべしですね。ということは、もしミッキー・ナックルズとサボテンマッチをやることになったら?

    (顧問) ノー! ものすごく最悪!でも、やれって言われれば、誰とどんなデスマッチスタイルでもやってやるけどな(拳を握りながら)。

    ――むかしからのネクロさんファンからしたら、いまの試合内容というのは本来のネクロさんではないと思うんです。あの頃の血みどろなデスマッチを見せてください。

    (顧問) それはオレもわかってる。わかってるよ…。


    お気に入りの潮崎豪Tシャツ姿がまた一段とかっこいい。そしてデスマッチファイターとしての誇りと輝きに満ちたネクロさんの後ろ姿にしびれました。また機会があれば月刊ネクロ・ブッチャーとして定期的にお話を聞くつもりです。需要がなくてもやります。

    【文・ジュードーチョップ aka Yama-chan】

  • タイラー・ブラック インタビュー/Tyler Black Interview

     

    『ハヤブサかな。17歳のときに彼を見てものすごく好きになったんだ。』

    飯伏幸太がゴールデンスターなら、タイラー・ブラックは不気味に黒光りするブラックスターといったところか。いまやROHに欠かせない存在となったアメリカインディー界の超新星タイラー・ブラックが、9月のROH日本公演で遂に初来日を果たす。いままでインターネットなどの動画サイトでしか見ることのできなかったタイラー・ブラックの超絶技を目の当たりにできるとあって、一部のアメリカインディープロレスファンにとっては絶対に見逃せない機会となりそうだ。冒頭にもあるように、彼の口からハヤブサの名前がでてくるあたり、彼のプロレスルーツもまた日本にあるといえる。

     

    ――まずはプロレスのキャリアは何年になりますか?

    (タイラー・ブラック 以下タイラー) プロレスを始めて3年半になるんだ。もうすぐ4年だね。

    ――誰に師事していましたか?

    (タイラー) トレーナーはダニー・ダニエルス。シカゴのトレーナーさ。

    ――プロレスを始めるきっかけは何ですか?

    (タイラー) 実はROHレスリングアカデミーの第2期生としてトレーニングしたのが始まりなんだ。

    ――えー、それは知りませんでした。

    (タイラー) で、まあ、お金も続かなくなって、とりあえず実家に戻ったんだ。僕は中西部出身なんだけど、シカゴでダニー・ダニエルスの道場があるってわかって、トレーニングを受けるために車で三時間かけてシカゴまで通ったんだ。週に何度もね。とにかく一心不乱にトレーニングを続けてさ、今の僕があるってわけ。

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    ――あなたの趣味(好きな本、好きなアーティスト、好きなバンド)を教えてください。

    (タイラー) 本だと『ファイトクラブ』のチャック・パラニュークが好きだね。あと、音楽は…あー(たまたま私が着ていたディリンジャー・エスケイプ・プランのTシャツを指さしながら)ディリンジャー・エスケイプ・プランのようなハードコアなものを聴いたり、ゲームの「ギターヒーロー」が好きでよく遊ぶよ。あとはー、ゴルフとかチェスなんかも好きだね。おかしいでしょ?(笑)

    ――「タイラー・ブラック」というリングネームの由来を教えてください。

    (タイラー) あはは、そうねー、まずはタイラーなんだけど、これは『ファイトクラブ』のタイラー(映画ではブラット・ピットが演じた)からで、ブラックは『ハリー・ポッター』に出てくるブラックという登場人物から。僕はシリアスなキャラクターが好きだから二つをくっつけちゃえってことで出来た名前なんだ。

    ――日本へ行くのは初めてですか?

    (タイラー) そう。9月のROH日本公演で初めて日本へ行くよ。かなり興奮してるよ。だってさ、この業界にいる人なら誰でも日本に憧れるじゃない?少なからず誰でも日本のプロレスの影響は受けてるし、それに日本ではプロレスは人気でしょ?

    --では子供の頃から日本のプロレスを観ていたのですか?

    (タイラー) いや、子供の頃は観てないよ。当時はやっぱりWWFとかメジャーなものを観てたんだけど、自分の意志でプロレスを観るようになってからは日本のプロレスも観るようになったんだ。あと、ROHでレスリングをするようになって、日本のプロレスを意識するようになったね。

    ――日本へ行ったら何をしたいですか?

    (タイラー) あー。日本食を沢山食べたいなー。寿司とかも好きだしね。何でも怖がらずに挑戦して食べるつもりだよ。

    ――日本のラーメンはお勧めですよ。ジャパニーズヌードルです。

    (タイラー) おお。それは是非チャレンジしてみるよ。

    ――あなたの一番好きなレスラーは誰ですか?

    (タイラー) 小さい頃はハルク・ホーガン。

    ――だいたいみんなそう言いますよね。

    (タイラー) そうそう。そうなんだよね。みんな小さい頃のヒーローはハルク・ホーガンだよ。あとショーン・マイケルズも好きだった。

    ――あなたのレスリングスタイルは誰の影響が一番強いと思いますか?

    (タイラー) AJスタイルズかな。彼は飛べるし、ハードヒッターでもあるし、結構オールラウンダーだよね。

    --あなたもどちらかというとオールラウンダーではないですか?飛ぶし、ハードヒッターだし、グラウンドでの攻防も対応できるし。

    (タイラー) そうであるように努力はしてるんだ。

    ――いままでの試合の中で一番危なかった経験、もしくは失敗談を教えてください。

    (タイラー) 肩が外れたり、鼻を骨折したり、いろいろとあるけどアゴを骨折したのが一番最悪だった。治るまでに何ヶ月もかかるし。あれは痛いよー、マジで。まあそんなとこかな。でも鼻の骨折なんてこの仕事すれば誰でもやることだし。いまはもう治ってるから何ともないけどね。

    ――対戦してみたい日本人レスラーはいますか?そしてそれは誰ですか?

    (タイラー) んー困ったなあ。どの時代から選んでも良いというなら、ハヤブサかな。17歳のときに彼を見てものすごく好きになったんだ。そう、だから彼の得意だったフェニックススプラッシュをいま僕が試合で使ってるのも、彼の影響なんだ。

    ――エイジ・オブ・ザ・フォール(AOTF)というチームの説明をしてください。またはどんなチームなのですか?

    (タイラー) AOTFというのは、自分の意志の通りに人生を生きろというモットーを掲げているんだ。言われたからしなきゃいけない、規則だからやらなくてはいけない、ではなくて、自分の気持ちに素直に従うことを目標としている。みんながやっているからという理由ではなくて、自分がやりたいからこそやることが大切なんだ。AOTFはそういうモットーを皆に伝えるために活動している。自分で人生を切り開いていくんだ、ってね。

    --私生活のあなた自身もこういった考えに賛同しているのですか?

    (タイラー) ああ、基本的にはそのように生きてるつもりだよ。だってさ、僕のやりたいことはプロレスなんだ。学校では成績も良くなかったし、大学へ行って卒業して会社勤めするなんてまっぴらだって思ってる。もしそんな道に進んでたら、絶対に後悔するに決まってるさ。僕はアイオワのすごく小さな町の出身なんだ。道路には街灯は一個もないし、コンビニは町に一軒あるだけ。そんな田舎出身だけど、目標を持ってやればできるっていうことも証明したかったんだ。

    ――ところで、背中にあるタトゥーは何て書いてあるんですか?

    (タイラー) あー。これは武士道のことが書いてあるんだ。日本人にとっては支離滅裂なことが書いてあると思うから先に謝っておくよ。本当にごめん!で、これは映画の『ラストサムライ』から取ったんだ。映画の中の台詞がとっても気に入ってね。すごく良いことを言ってると思ったんだ。あの映画を観たとき僕は18歳で、ものすごく拗ねていた時期だったんけど、「自分の意志をしっかりと持ち、その目標に向かっていけば、必ずその目標に到達できる」というようなことを言ってたんだ。で、それを背中に入れてみたってわけ。

    ――日本のファンへメッセージをお願いします。

    (タイラー) 日本の皆さん、はじめましてタイラー・ブラックです。今回初めて日本へ行きます。是非、会場へお越し下さい。僕たちが革命を起こします。

    ――そして最後に、あなたにとってプロレスとはなんですか?

    (タイラー) うーん、いま現在で言えば、僕のライフスタイル。プロレスラーになるということは、生活の全てがプロレスに関連するってこと。辛い時もあるし、逆に楽しいこともある。だから一言で言うのは難しいね。だってたくさんの要素が含まれているからね。

    【文・ジュードーチョップ aka Yama-chan】

  • Tyler Black

     

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    【名前】タイラー・ブラック 【生年月日】1983年3月28日 【出身地】アイオワ州バッファロー 【身長】185㎝ 【体重】95㎏ 【得意技】ゴッズ・ラスト・ギフト(スモールパッケージドライバー)、前方450°回転スプラッシュ、スタンディング・シューティングスター・プレス 【経歴、タイトル歴、エピソード等】2005年にプロデビュー。スコット・カウンティー・レスリング(SCW)でヘビー級王者に就く。2006年、レスリング・ソサエティー・エックス(WSX)に参戦。ジミー・ジェイコブスと”Do It For Her”(D.I.F.H.)を結成。2007年、IWAミッドサウスのライトヘビー級王者に就く。同年9月からROH 参戦。ジミー・ジェイコブスとタッグを組み、”The Age of the Fall”(AOTF)を結成。ROH Final Battle 2007でブリスコ兄弟からROH世界タッグ王座を奪取。2008年3月ROHフィラデルフィア大会でROHヘビー級王者ナイジェル・マッギネスとメインイベントで対戦。惜しくも負けてしまったものの好勝負を展開し注目を浴びる。

    【文・ジュードーチョップ aka Yama-chan】

  • ブライアン・ダニエルソン インタビュー(Part 3)/Bryan Danielson Interview (Part 3)

     

    Part 1 , Part 2 からの続き)

    ――現在、特にインディーなどでは危険な技であればあるほど歓声が上がったりする傾向にあると思うのですが、それについてはどう思いますか?

    (ダニエルソン) 一言で言えば、タフだね。アメリカのファン、特にROHのファンなんかは、より危険な技を要求してくる。そうすると、僕達もそれに答えるべくさらに過激な方へと向かっていく。中にはそれに体が耐えられなくなるレスラーもいる、それを続けていくのは大変だよ。ラッキーなことに、そういったスタイルは僕のスタイルではないから、僕はそこまでのことはしなくても済んでいるんだ。僕はもっとサブミッション中心のスタイルだからね。でも多くの人にとって、これはかなり大問題だと思うよ。例えば大技一つ出すにしても、一度出せばそれだけ関節に負担がかかる。人間の体はそこまで頑丈にはできてないんだ。それにアメリカのファンは気が短い。テレビやネットが発達しているおかげで、あれをやってくれ、これをやってくれと常に要求してくる。情報過多の弊害と言えばそれまでなんだけど、これについてはどう対処したら良いのか、僕にもわからないというのが本音だよ。

    ――怪我の話がでたのでお聞きします。いままで試合中に肩や目などの怪我をされていますが、プロレスを始めてから一番辛かった怪我を教えてください。

    (ダニエルソン) 精神的に一番辛いのは脳震とうだね。実際に、昨年のクリス・ベノワの死亡原因は度重なる脳震とうに関係しているんじゃないかと言われているんだ。特に年齢が上がるにつれ、脳震とうの後遺症が出てくる傾向にある。この仕事をしていれば、誰もが脳震とうを経験する。一番怖いのは、いま現在は何も感じていなくても、例えば45歳になった時に突然出てきたりすることなんだ。でも僕は自分の体のことはよくわかっている。関節や腱が悲鳴を上げたらすぐにわかるし、そうなったら健康的な生活はもう送れないなとわかるんだ。そろそろ引退かと考えることはできるけど、脳震とうの場合は歳を取って全く前兆もなく突然後遺症がやってくる。その点から言って、脳震とうがもっとも精神的に怖い怪我だね。肉体的に一番痛かったのは、2006年にやった肩の脱臼。あの時は肩の腱が2本切れたんだ。その後4ヶ月まともにレスリングができなかった。かなりいかれた怪我だったよ。毎週そんな状態で試合をしなければならないし、本当に痛かった。

    ――結局、肩の手術はしていないんですよね?

    (ダニエルソン) うん、してない。実はね、僕は針とか手術がすごく怖いんだ。だから手術をせずに治そうと思って、毎週カイロプラクターやセラピストに通って、エクササイズをして、筋肉をつけて徐々に治していったんだ。まだ少し肩に痛みはあるけど、別に問題になるほどの痛みじゃないよ。左肩に比べると動きに多少制限はあるけど、実際に他の人達よりも関節は柔らかいと思うよ。色々とヨガをやったり、ストレッチしたりしてるからだと思うけど。

    ――ではプロレスをするうえで苦しかったり困ったりしたら何に頼り、何を考えますか?

    (ダニエルソン) 何だろう?例えば何か困難に直面しても「止めない」という選択肢を選ぶ人もいると思うんだ。例えばさ、マクドナルドで働いていて、指を火傷したとするでしょ?その時に「火傷した!薬くれ!絆創膏くれ!」って騒いですぐに家に帰っちゃう人もいるかもしれないし、火傷してもそのまま働いている人もいると思う。レスラーのほとんどって後者タイプだと思うんだ。特に痛みについては他の誰よりも耐久性がある。それに愚痴を言ってばかりいては、この仕事にはつけないよ。そう、このあいだマーク・ブリスコが手首を骨折したでしょ?彼はそれについて一度も不平不満を言ったことがないんだ。例えば「怪我した時どうだった?」って聞けば、「すげー痛かったよ!」とは言うけど、骨折したことに対して自分から愚痴ったりすることは一度もない。「あれは人生で一番痛い怪我だったよ」なんて冗談まじりに言うことはあっても、何で俺がこんな目に…とかの愚痴は一切ない。僕が思うに、この業界にいる人達は、不満を言わないタイプで、リング上で怪我をしたりしてもまあ何とかなるだろうという気持ちを持っている人が多いと思う。多くのレスラーは元々こういった思考を持っているし、逆にレスラーはそういう思考を持つべきだと思うんだ。僕も過去2~3年の間に色々怪我をしたけど、こういった気持ちで乗り切ってきたよ。

    ――なるほど。強い精神力が必要というわけですね。では次の質問ですが、現在気になる日本人レスラーはいますか?

    (ダニエルソン) 永田。それにROHにも参戦している丸藤も素晴らしいと思うよ。あと前回のノアのシリーズで小橋と一緒にツアーを回ったけど、彼も素晴らしいレスラーだと思う。一度対戦したんだけど、リング上での存在感がもの凄いんだ。あと、蹴りが素晴らしいのでKENTAも良いレスラーだと思う。同じ理由で中嶋(勝彦)もいいと思うよ。僕は2004年に新日に出たんだけど、その時に彼と対戦をして蹴りをもらった瞬間に「オー・マイ・ガッ!!」って(笑)あれは今までもらった中で一番効いた蹴りだったなぁ。いま挙げた人達は、試合を観ていてとても楽しいと思う。あと女子レスラーだけど、吉田万里子もとても良い選手だと思うよ。彼女の動きはとてもスムーズだし、サブミッションもとても上手い。観ていてとても良い選手だと思うよ。

    ――いま名前を挙げた人と対戦したいですか?

    (ダニエルソン) もちろん!実際にKENTAとは何度か対戦しているし、小橋とも一度対戦した。永田とはぜひもう一度対戦したいね!あとさっきは名前挙げなかったけど、田村潔司とも対戦したい。彼は今自分の団体を持ってるんだよね?田村との対戦はすごく気に入ってるんだよ。吉田万里子とも対戦したいけど、彼女は女子だからねぇ(笑)でも、彼女とは同じ興業に出たんだ。フランスで先月コミケがあって、そこでプロレスの試合もあったんだけど、彼女は自分の生徒を連れて来ていて、彼女の試合を観たら動きがすごくスムーズでしなやかだからびっくりしたよ。僕が持っていない柔軟性を彼女は持っている。それにスピードもあるしね。アメリカには彼女みたいな女子レスラーはいないよ。

    ――飯伏幸太はどう思いますか?

    (ダニエルソン) 彼はすごく才能あると思う!はっきり言って、彼は凄い。彼がROHに来た時には、僕はちょうどノアに出ていて会えなかったんだ…。ところで彼とデイヴィー・リチャーズの試合をランス・ストームが大絶賛しているの知ってる?彼が生涯観た中で最高の試合の一つって褒めているんだよ。飯伏は本当に素晴らしいよね。もし僕が彼なら、もっとキック中心のスタイルになると思うんだ。あれだけのキックができるんだからね。でも彼はキックの他にもハイフライもやるでしょ?だけど僕は彼の体が心配だよ。いつか怪我するんじゃないかって、彼はまだ若いし、日本のプロレス界の将来を背負って立つレスラーであることに間違いはない。それにファンからも絶大な支持を得ている。しかも彼はそれに答えようとしているでしょ?それでハイリスクな技を多用しているから、いつか怪我するんじゃないかって心配だよ。彼は本当に素晴らしい。できるけど「やらない」っていう選択肢もあるけど、彼はあえてそれを選ばずにどんどんチャレンジしている。そこがまた素晴らしい理由の一つだね。

    ――飯伏選手は今年のJr.タッグリーグにも出ますよ。

    (ダニエルソン) 本当?誰と組むの?

    ――中嶋選手です(笑)

    (ダニエルソン) Oh my god!! それは大変だなぁ…(苦笑)対戦したくないなぁ…。

    ――ガハハッ。では次の質問です。あなたがプロレスを続けている原動力とは何ですか?

    (ダニエルソン) また難しい質問だなぁ。うーん…一言で言えば、僕自身がプロレスをエンジョイしているからだね。僕には一般的な仕事は合わない。僕の父は製紙工場で働いていて、一日12時間働いて、週に48時間か60時間働いている。僕の友達は大学を出てそれなりの職に就いているけど、一般的な仕事は…僕にはエンジョイできないんだ。例えば僕は他に興味あることもあるけど、プロレスのようにエンジョイできないと思う。それにピースボートにも興味あるけど、2年間どこかの国に行って戻ってきたとしても、その時はもう職にあぶれてるし。他にはガーデニングも好きだけど、農業やってもあまり儲からない。僕が興味のあることって、あまりお金にならないようなことばかりなんだ(笑)だから今、僕がプロレスを続けているのは、僕自身がエンジョイしているからなんだよ。まだ若いし、体もついていける。だから今の内にできるだけ稼いで、引退の時が来たらまた学校に戻って、それからやりたいことをするつもりだ。

    ――プロレスLOVEってことですね?

    (ダニエルソン) イェス!!

    ――ではROH日本公演についてお尋ねします。今回ROHの選手として来日するわけですが、今まで新日本やウワイステーションやノアなどへの参戦と何か気持ち的に変わる部分などはありますか?

    (ダニエルソン) ROHはこれらとは全く違うスタイルなんだ。もっとスピードと動きが重視されている。例えばノアだと、ベテランレスラーがいて、若手もいて、たまに若手がベテランレスラーと試合をしてっていう感じなんだけど、ROHは最初から最後までもっとアクションが詰まっていて非常に中身が濃い。アメリカでは全ての試合が高レベルである必要がある。日本ではそうではない。それが大きな違いだと思う。

    ――なるほど。確かに日本の興業というのは、第一試合から始まり、メインイベントまでそれぞれの試合の役割というのがありますが、ROHの場合は、第一試合から全てメインイベント級の試合ですよね。

    (ダニエルソン) その通り!

    ――では具体的にROHの見所を日本のファンに教えてください。

    (ダニエルソン) まずROHのレスラーはとにかく全力を尽くす。日本のプロレス団体の興業の場合、ツアーがあるでしょ?例えば21日間のツアーがあって、そのうち15日試合をしたりするわけで体力もそこそこセーブしておかないといけない。でもROHの場合は、2日連続で試合があって、それで終わり。次に5日休んで、また2日試合。こういった理由も日本人レスラーが長く現役を続けていける理由の一つだと思う。3週間ツアーがあるけど、中には6人タッグもあり、ツアーが終わればまた長期で休みがある。この方が体にとって楽なんだ。でも、2日全力で戦って、ハードヒットで、ペースが早く、エキサイティングなレスリングをする。これがROHのスタイルなんだ。

    ――では、日本のROHファンへメッセージをお願いします。

    (ダニエルソン) ぜひROHを観に来てください。プロレス好きな方なら、楽しんで貰えると思います。そしてROHの雰囲気、レスリングスタイル共に気に入って貰えるはずです。

    ――では最後に。あなたにとってプロレスとは何ですか?

    (ダニエルソン) うーん…一言で言えば「自由」かな。僕が好きなことを感じたままに、そして芸術的に表現できる自由な場。また体型を維持するのに役立ってもいるよ。だってもしレスラーになっていなかったらジムにちゃんと通うかわからないじゃない?(笑)あとはより良い自分でいるための動機。いま現在の僕にとってはライフワーク。例えば他のことをするにしても、何でそれをしているのかと聞かれたら「プロレスのため」って答えるよ。柔術の練習は?「プロレスのため」キックボクシングは?「プロレスのため」何でその本を読んでるの?「読書が好きだからだけど、でも何かインタビューで使えるフレーズとかあるかもしれないじゃない?」って。だから僕の全てがプロレスに向かっているんだよ。

    ――激しい試合の後、わざわざ時間を割いていただいてありがとうございました。これからも応援しています!

    (ダニエルソン) こちらこそ、どうもありがとう。

    おわり

     

    ごりごりのアスリートである以前に、その柔軟な頭でプロレスという戦いの場を楽しんでいるといった印象のブライアン・ダニエルソン。私が想像していたよりも、彼の目指すものはまだまだ高いように感じた。プロレスとは「自由」なり。孤高のプロレスラーという言葉がこんだけ似合う人もいないな、と思った。果たして、9月のROH日本公演ではどんな活躍をしてくれるのか、いまから楽しみです。

     

    【文・ジュードーチョップ aka Yama-chan】

  • ブライアン・ダニエルソン インタビュー(Part 2)/Bryan Danielson Interview (Part 2)

     

    Part 1からの続き)

    ――では、次に少し前のことについてお尋ねしたいと思います。プロになる前にバックヤードレスリングをやっていたというのは本当ですか?

    (ダニエルソン) まあ、本当だよ(笑)でも、今見かけるようなクレイジーなバックヤードレスリングではなくて、言葉通り「バックヤードでレスリングをしている」というもので、もっとプロレスごっこみたいなものだけど(笑)これはね、なんでやったかって言うと、僕の友達がウェブデザインのクラスを取っていて、何かウェブサイトを作りたい、と。で、プロレスをちょっと取り入れようということになって、半分冗談で作ったんだ。写真とかアップして。それを見た人達が、「ブライアン・ダニエルソンはバックヤードレスリングをしている!」って言い出したんだけど、実際は「バックヤードでプロレスごっこをしている」ってことなんだけどね。

    ――その時の経験が今に生かされていることはありますか?

    (ダニエルソン) うーん、無いかなぁ…。当時はマットレスの上でお互いにプロレスの技を出し合っていただけで、それ以上のものではないからなぁ。

    ――では、その時の面白いエピソードなどありますか?

    (ダニエルソン) 実はその時の映像はたくさんあるんだよ。だから、今後僕のベスト版DVDを作ることがあれば、特典映像として入れるのもアリかなと(笑)テレビ番組の『Grind 』って知ってる?‘90年代のものなんだけど、水着を着た人達が音楽に合わせて踊り狂ったりしている馬鹿げた番組で、それをパロってくだらないことをやったりしてたんだ。2人がレスリングしている回りで大勢の人が踊ったりとか(笑)だから、今それをみると「あー、くだらないなー(笑)」って思うよ。いや、良い意味でね(笑)

    ――つまり、その時のレスリングは今の物とは全く別物なわけですね。なるほど。では次にお伺いしたいのは、ショーン・マイケルズ主宰のスクールやロス道場でストロングスタイルを学び、またウィリアム・リーガルにヨーロピアンレスリングの基礎も学んでいるということもあって、あなたのレスリングスタイルは色んなものがミックスされた独特なスタイルだと思うのですが、あなたの考える理想のプロレススタイルとは何でしょうか?

    (ダニエルソン) 難しい質問だね…。理想のプロレスっていうのは、その時の状況や対戦相手によっても変わると思うんだけど、基本的には僕は猪木のスタイルがすごく好きなんだ。例えば猪木対藤波の60分フルタイム(恐らく1988年8月8日のIWGP戦)とか、もう天才的だと思う。今、僕がやろうとしているのはああいった感じのスタイルなんだ。それと古いイギリスのプロレスもよく見ている。昔の新日スタイルに似てるんだけど、もっとマット上の攻防が中心で、猪木の試合ほど白熱はしていない。でも技術的には非常に素晴らしい。だからこの二つのスタイルが僕にとっての理想だし、お気に入りと言えるね。どちらかと言えば、マット中心のレスリングスタイルが好きなんだ。例えば初期UWFの藤原とか、初代タイガーマスクとか。初代タイガーに関して言えば、初期UWFに参戦していた頃が一番好きなんだ。蹴りは凄く冴えてるし、フジワラアームバーなんかのサブミッション技術も素晴らしい。この頃のスーパータイガーには良い要素が多く詰まっていると思うよ。

    ――ということは、タイガーマスクよりもスーパータイガーが好きということですよね?

    (ダニエルソン) そう!スーパータイガーは本当に素晴らしい。凄いとしか言いようがない。僕が今、一ファンとしてプロレスをみるなら、この当時の試合を見るね。間違いなく。

    ――では、現在あなたの目指しているプロレスはその頃のもの、ということになりますか?

    (ダニエルソン) いや、今のアメリカのマット界では、こういったスタイルは無理なんだよ。まずファンが望んでいない。例えばこういうスタイルで試合をしたとするでしょ?そうしたら試合開始5分で客から「Boring!(つまらない)」ってチャントが始まるよ。でも僕自身はああいったスタイルを現在のスタイルに組み入れることは可能だと思っている。だから僕の基本スタイルにこういった要素を入れようとしているところなんだよ。特にアメリカでは、色んな要素を入れる必要がある。そうでないと、誰も興味を示してくれないからね。だから個人的には、そういった要素を加えているのが理想のスタイルなんじゃないかと思っているんだ。

    ――なるほど。なかなか難しいですね。ところで最近のあなたのレスリングスタイルはキラー猪木を彷彿とさせていますよ。

    (ダニエルソン) 本当に?どうもありがとう。

    ――当時の新日本を観て育っているので、やはり私の考えるプロレスの根底にあるのはああいったスタイルなんです。今の新日本とは随分違うと思いますが。

    (ダニエルソン) でも、僕はナガタはとても良い選手だと思うよ。彼は素晴らしいよ。

    ――あの白目はどう思います?(笑)

    (ダニエルソン) ああ、こういうやつ?(笑)(と言って真似をする)。あれは、彼なりに何か自分らしいことをやっているんだと思うけど(笑)でも、彼はアマレス出身で、基礎はもちろん素晴らしいし、キックも素晴らしい。彼のテクニックは全てにおいて素晴らしいと思う。僕が新日にいて彼らと試合をした時、僕はまだ今ほどの経験も技術もなかったけど、当時から永田は素晴らしいとずっと思っていたんだ。いま、僕が一個人としてプロレスを観るなら、さっき言った試合の他には間違いなく彼の試合も観るね。彼と棚橋とのIWGP戦とか本当に素晴らしいと思う。またプロレスラーとして見た場合も、僕が理想としているレスラーに近いと思うんだ。ヘビー級としても彼は素晴らしい試合ができるし、Jr.ヘビーとしても素晴らしい。彼はキラーだと思う。永田の試合は本当に好きだね。

    ――あなたも十分キラーですよ(笑)

    (ダニエルソン) 僕なんかまだまだ。頑張ってはいるけどね(笑)

    ――なぜ新日ロス道場に行ったのですか?

    (ダニエルソン) 当時、カリフォルニアの若いレスラーをトレーニングするために、ロス道場がレスラーを募集してたんだ。「ここに来て練習するといいよ」って感じで。知っていると思うけど、アメリカにはレスラーがゴロゴロいる。で、みんななんとかしてリングに上がろうと必死なんだ。みんな日本に行きたがっているから、自分の映像や写真を日本に送りつけて売り込みをしている。日本以外にも、イギリス、メキシコ、WWEなんかにもね。で、僕がロス道場に行った時には真壁なんかもいて、ある意味トライアウトみたいな感じでまずは練習に参加したんだ。レスリングスキルなんかを見られたんだけど、「みんなレスリングスキルはかなり良い。でもどれくらい真剣に考えているのかなども、精神面ももっと見てみたい」って言われたんだ。実際に僕は荷物をまとめてロス道場に入門した最初のレスラーだったんだよ。最初は床で寝たりしてさ。それでも僕が望んでいたことだったんだ。とにかく日本に行きたかったし、アメリカでレスラーとして生活ができるとは思っていなかったし。アメリカだととにかく体が大きければ良いという風潮があるけど、日本だとJr.ヘビーでも十分に戦っていける。だからこれこそが僕のスタイルだと思ったんだ。

    ――実は私は以前にロス道場のドキュメンタリーみたいなものを見たことがあるんです。ロス道場の練習を密着取材していたものなんですけど、とにかくあなたが黙々と走っている姿がとても印象に残っていて、この選手は大物になる!と宣言していたんですよ。

    (ダニエルソン) 本当に?どうもありがとう。

    つづく

    Part 3 はこちら

    【文・ジュードーチョップ aka Yama-chan】